私の原点にある修学旅行
大学を卒業して間もない、駆け出しの添乗員だった頃。旅行会社で修学旅行に携わっていた私には、今も忘れられない光景があります。
ある学校の修学旅行の出発日。朝の駅には、一人の生徒さんを見送るために、驚くほど多くのご家族が集まっていました。
お父さん、お母さんだけではありません。おじいちゃん、おばあちゃん、そして親戚の方々まで。まるで遠い旅に出る我が子を、家族みんなで送り出すような、あたたかく、少し緊張した空気がそこにはありました。
学校が定めていたお小遣いの上限は、たしか五千円ほどだったと思います。
ところが、その生徒さんのしおりを見せてもらうと、お土産を渡す相手として、家族や親戚の名前がずらりと書かれていました。予定しているお土産をすべて合わせると、どう考えても三万円を超えるような内容でした。
きっと、ご家族一人ひとりが、
「好きなように使っていいんだよ」
と、少しずつお小遣いを持たせてくれたのだと思います。
それでも、その生徒さんは、そのお金を自分のために使うのではなく、渡してくれた一人ひとりに、きちんとお土産を返そうとしていました。誰に何を買って帰ろうかと、一生懸命に考えている。もらった気持ちを律儀に返そうとする、その姿のなんともいえないけなげさに、私まで胸が熱くなったことを覚えています。
後で聞いた話ですが、その生徒さんは、新幹線に乗るのをとても楽しみにしていたそうです。ご家族の中にも新幹線に乗ったことのない方がいて、生徒さん自身も、これが初めての新幹線でした。
当時、新幹線はもう、決して珍しい乗り物ではありませんでした。それでも、初めての新幹線が、家族みんなにとっての特別な一大事になる。そんなご家庭がまだあるのだと知って、あの朝、家族総出でお見送りに来られていた理由が、少し分かった気がしました。
旅の仕事には、こんな感動もあるのだ——そう教えられたことが、私が旅を仕事にしていく、ひとつの原点になりました。
私たち旅行会社にとっては、数ある修学旅行の一つだったのかもしれません。
しかし、そのご家庭にとっては、家族や親戚が総出で見送りに来るほどの、大きな出来事でした。
たった二泊三日の旅であっても、子どもにとっては、これまで知らなかった土地や文化、人との出会いに触れる特別な時間です。そして、その旅を待ち、見送り、帰りを楽しみにしている家族にとっても、修学旅行はかけがえのない時間なのだと思います。
修学旅行は、子どもたちが「旅の楽しさ」に出会う、最初の入り口になることがあります。
あの朝の光景は、長い年月が過ぎた今も、私の心に残り続けています。
年齢を重ね、改めて旅行会社を始めようと考えたとき、私がもう一度取り組みたいと思った仕事の一つが、修学旅行でした。
修学旅行の仕事は、決して効率だけで考えられるものではありません。先生方との打ち合わせ、安全管理、行程の調整、保護者への説明、集金や変更への対応など、多くの時間と手間が必要です。
それでも、その一つひとつの旅の向こうには、子どもたちの期待があり、先生方の願いがあり、送り出すご家族の思いがあります。
LAKE WEST TOURISM は、そのことを決して忘れません。
子どもたちにとって、いつまでも心に残る旅をつくること。そして、先生方やご家族にも、安心して送り出していただける修学旅行をつくること。
それが、私がもう一度、修学旅行の仕事に向き合いたいと考えた原点です。
代表 岸本 直之